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ライフ サイエンス分野と医薬品市販前段階で AI を活用

医薬品ライフ サイクルと AI 言語戦略、パート 1

人工知能 (AI) と大規模言語モデル (LLM) は、ライフ サイエンス業界に革命をもたらしました。ICH によるハーモナイゼーションが医薬品開発に取り入れられた 1990 年代以降、スタンダードとなっていたコンテンツの作成、処理、翻訳の手法は、今や変化の時を迎えています。しかし、規制対象文書やライフ サイエンス言語サービス向けの生成 AI のリスクを管理し、そのメリットを大規模に活用するための新たなベスト プラクティスはまだ明らかになっていません。ライフ サイエンス業界は AI を採用する最初の業界というわけではありませんが、ライオンブリッジでは、ライフ サイエンス企業向け AI サービスの導入を本格的に検討することを医薬品スポンサーのお客様におすすめしています。

本ブログ シリーズでは、医薬品のライフ サイクルの各段階についてコンテンツと言語の面から考察し、規制対象医薬品に関連する翻訳においても LLM を効果的かつ安全に活用する方法について解説します。LLM の導入にはどのような課題があるのでしょうか。ライフ サイエンス業界では、どのような場面で AI を活用できるのでしょうか。

今回の記事では、市販前の医薬品開発段階および規制関連の登録段階について考察します。

ライフ サイエンス業界における AI を活用した市販前医薬品の言語戦略

医薬品は多くの R&D 段階を経て開発され、その過程でターゲット プロダクト プロファイル (TPP) を裏付ける、安全性と臨床性能に関するデータが生成され蓄積されていきます。TPP とは、市販される医薬品の目指すべき特徴と、臨床プログラムで達成すべき基準を記述したものです。臨床試験開発プラン (CDP) は、TPP および規制当局による科学的なレビューに基づくもので、規制当局への申請と承認に向けた適切なデータを生成することを目的に策定されます。CDP では、新薬候補の研究戦略と臨床試験計画の概要が示されます。医薬品の開発を支えているのは生物学と化学であるため、データに基づいて何度も繰り返される反復的なプロセスが必要になり、市販医薬品のラベルに最終的に記載される効能表示を裏付けるための大量のコンテンツと文書が発生します。新しい医薬品の R&D および規制戦略の複雑かつ反復的な性質は、言語サービスのほか、医薬品関連のコンテンツで AI を効果的に活用する方法にも影響を与えます。

デジタル表現された円形に広がる格子状の線

AI 導入の障壁となる文書保有の分散化

医薬品のライフ サイクルの中で、市販前段階における文書の作成は非常に専門性が高く、さまざまな部門が携わる作業です。たとえば、前臨床研究、臨床試験の開発/運用、規制関連、医薬関連の部門などが文書の作成に関わります。これらの部門は、プロジェクト チームを中心に密接に協力することで、臨床プロトコルや申請書類などの重要な R&D 関連文書を作成、確認、承認します。しかし、同じコンテンツに対して言語サービスを手配したり選定したりする際に、部門横断的なやり取りがほとんど (またはまったく) 行われないことも珍しくありません。文章/翻訳生成に関して戦略的な連携や部門間の協力がないと、医薬系翻訳サービスにおいて LLM のメリットを十分に得ることが難しくなります。

TPP と CDP は、医薬品に含まれる化合物の科学的、戦略的、商業的な面について責任を負うコア プロジェクト チームが担当する場合がほとんどです。一方で、TPP と CDP 以外にも、以下のようなさまざまな重要文書が「化合物レベル」で存在します。

  • グローバル規制戦略
  • 研究者概要書
  • 治験薬概要書
  • 新薬申請書

多くの場合、臨床試験チームは臨床医薬品の開発時に CDP 実施のための一時的なサブプロジェクトとして結成され、試験結果が出た後に解散します。CDP の実施には何年もかかる場合があるため、臨床試験チームは何度も結成と解散を繰り返します。また、臨床試験チームには社内のリソースが割り当てられることもあれば、アウトソーシングによって社外のリソースが利用されることもあります。各臨床試験用に作成される重要な文書はそれぞれの臨床試験チームが保有し、それが最終的に臨床試験マスター ファイルに、ひいては新薬申請書にも利用されることになります。

臨床試験プロジェクト チームの結成は一時的なものであるため、繰り返し使用されるコンテンツの翻訳やその情報が、次の臨床試験へと自然に引き継がれることはほとんどありません。そのため、臨床プログラム全体の言語戦略を事前に決めておかないと、たとえば、2 つのよく似た非常に重要な第 3 相プロトコルが別々の言語サービス プロバイダーによって翻訳されるといった事態が生じる可能性があります。そうした場合、貴重なライフ サイエンス関連の言語資産を AI で十分に活用する機会が失われてしまいます。

言語戦略の早期構築 — ライフ サイエンス分野における AI の全面的導入への扉

グローバルな翻訳チームを結成して戦略的な役割を担わせることで、言語面の成果に対する責任の所在を明確にするとともに、優れた成果につなげることが可能になります。こうした体制が必要なのは、標準的な R&D 組織ではその複雑な構造に加え、コンテンツが分散保有されていることが原因です。また、グローバルな調達部門の場合も、言語サービスの費用対効果について戦略的に考えていたとしても、規制対象文書や AI に関する詳しい知見を持っていることはまずありません。また、コンテンツの各担当部署に適切な質問を投げかけられるだけの専門知識を持っていることも多くありません。

当社では、臨床開発フェーズの早い段階で AI 言語戦略を構築することをお客様に推奨しています。御社の臨床試験の運用部門や臨床アウトソーシング部門がオーナーシップを持つ戦略を、AI、言語、ライフ サイエンス分野の専門家たちからなる当社のエキスパート チームがご支援いたします。LLM を最大限活用できるのは、臨床試験開発プランの第 2 段階以降です。中でもすべてのデータと文書をまとめる規制関連の登録段階では、LLM が非常に効果的です。

また医薬品スポンサーは、共通の言語戦略に基づく管理を行うことで、市販前段階から引き継いだすべてのコンテンツと統合された言語資産を活用して、コンテンツとメッセージをさらに最適化し、上市を成功に導くことができます。

ライフ サイエンス業界における市販前段階での AI 活用の機会

  • より多くのデータと文書が蓄積され繰り返されるにつれて、コスト削減効果は高まり加速していきます。

  • 臨床試験関連の文書、臨床試験結果の伝達、臨床試験参加者へ伝える情報、臨床試験の届け出と規制機関への提出文書、ラベル情報/効能表示のすべてにおいて、言語の正確性と一貫性が向上します。

  • 化合物レベルおよび臨床試験レベルで保有されるコンテンツ全体で、言語資産を最適に活用できます。

お問い合わせ

医薬品開発のライフ サイクルにおいて、AI を活用したライフ サイエンス関連のローカリゼーション サービスのご利用にご関心があれば、開発のあらゆる段階に対応したコンテンツ翻訳とソリューションをご提供する当社まで、ぜひお気軽にご相談ください。ライフ サイエンス分野に特化した AI 言語ソリューションもご用意しています。皆様からのお問い合わせをお待ちしております。

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執筆者
ライフ サイエンス戦略および製品マーケティング担当 VP、ピア ウィンデロブ