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パンデミック (疫病の感染爆発) は世界的なスケールの課題です。新型コロナウイルス (COVID-19) の危機はすべての大陸に甚大な被害をもたらし、医療システム、ビジネスの世界、ニュース媒体、そして個人の家庭にも難題を突きつけています。今では事態の深刻さが大半の人に知られ、感染拡大のペースを抑えるには今までのライフスタイルや動き回り方を変えざるを得ないという認識が広がりました。政府から新しい勧告が発せられるたびに社会生活と働き方が修正されていく状況の中、私たちは、連絡や情報交換の手段をテクノロジーとソーシャル メディアに頼っています。私自身も、この日曜には家族一緒の食事をしたのですが、3 か国の 6 か所から Facetime のビデオ通話で「集まる」という形になりました。
この異常事態が私たちの世界共同体に広げるものは、孤立化でしょうか、それとも相互の結びつきでしょうか。テクノロジーの活用やバーチャルな業務スタイルの採用を促す流れはこのまま持続するのでしょうか。現在、緊急時のケア、COVID-19 感染の抑制、医療崩壊の防止に世界中が全力で取り組んでいますが、これらの問いに答えられる人は誰もいません。
全世界の結びつきが高度に発達した環境が、新型コロナウイルスの感染を急速に広げる一因になったという側面はあるでしょう。しかし、その環境が COVID-19 の治療法、解決策、影響緩和策を生み出す活動に役立つというプラスの面もあります。もちろん、今後発生するかもしれない別種のパンデミックに関しても同じことがいえます。パンデミックの効果的な対応策が生まれるためには、調査・研究、テクノロジー、イノベーション、連帯、資金、地球規模のインフラといった要素が複雑に作用しあう環境が必要です。実際、今の私たちは、さまざまな政府機関、研究者コミュニティ、医療システムの世界的なマリアージュによってさまざまな成果が生まれる様子を目の当たりにしています。COVID-19 感染者に対するケアの取り組みや、医療ニーズを満たす画期的な治療法の研究開発を継続させるための取り組みが、驚異的なスピードで展開されています。
3 月 19 日、世界保健機関 (WHO) の欧州地域ディレクターが、国境封鎖された状況の中でも重要な消耗品の流通ができるよう、全世界の連帯とヨーロッパ諸国の協力関係継続を呼びかけました。各国政府の COVID-19 危機対応行動が迅速に、柔軟に、費用対効果の高い形で行われるよう、WHO は COVID-19 連帯対応基金を発足させ、対応行動の指針となるガイダンス ツールを公開しています。また、全世界における新型コロナウイルス感染拡大の状況報告を随時発表し続けています。3 月 25 日現在、感染が確認された人の総数は 414,179 人、死亡者は 18,440 人。そのうちヨーロッパにおける感染者数は 220,516 人、死亡者数は 11,986 人。これらの数字は日ごとに増え続けています。
研究者コミュニティと医療分野の規制当局は、新しい COVID-19 治療法の開発促進と、患者および医療システム全般の負担軽減を目的として、研究開発活動や許認可プロセスの便宜を図るためにそれぞれの立場で動いています。また、航空輸送業界は、旅客輸送ができなくなった今も、重要な医療機器が世界中の医療従事者や患者のもとへ迅速に届けられるように特急便や料金優遇策を提供し、24 時間態勢で活動しています。
3 月 18 日、アメリカの食品医薬品局 (FDA) は、COVID-19 のパンデミック状況下で臨床試験を実施する方法と、現在進行している臨床プログラムの中断を最小限に留める方法について、業界向けのガイダンスを公開しました。それに続いて EU の医薬品庁 (EMA) も、3 月 20 日、ヨーロッパで臨床試験を実施するスポンサー向けに同様のガイダンスを公開しました。これらのガイダンスは、現在進行している重要な臨床プログラムの中断を最小限に留めるために、そして何より、臨床試験によって得られるデータの品質を維持しながらも臨床試験協力者の安全性をしっかり確保するために作成されたものです。
インフラや交通手段に規制がかかっているため、試験プロセス、実施場所への移動、モニタリング、合意形成手続き、身体的な検査などを遂行することは非常に難しくなりました。そこで、FDA と EMA は臨床試験スポンサーに対し、物理的に現地へ出向いての試験をなるべく控え、危険性が小さい電話やビデオ通話などを使った代替手段を採用するよう勧めています。規制当局も、移動の必要性を減らすために、モニタリングの代替としてソース データの遠隔検証を勧める方針を打ち出しています。
3 月 19 日、EMA は EU の研究者コミュニティに対し、COVID-19 に適用できる可能性がある治療法に関して、新薬に必要とされる有効性・安全性データを得るために、管理下での大規模な臨床研究の優先度を高めるよう求める声明を出しました。その声明の中で、臨床試験スポンサーに対しても、新薬開発の速度を上げるため臨床試験の対象にすべての EU 諸国を含めるよう勧めています。これにより、結果的に臨床試験の地理的な対象範囲が広がるでしょう。
従来のフェーズ III 試験の対象は、EU 加盟国のうち「ビッグ 5」(ドイツ、フランス、イタリア、スペインと、最近脱退したイギリス。「EU5」とも呼ばれる) と、東欧または北欧の 2 か国ほどに限られる場合がほとんどです。EU 全加盟国で共通のプロトコルに基づく試験を実施するということは、かなりの規模拡大を意味し、24 種類の言語間で効果的な情報伝達を行う必要が生じます。
臨床試験の対象国が増えることで発生する言語面の課題
地域によって使用言語がさまざまに異なる EU 圏内のような環境で、臨床試験を大規模に展開するには、同じコンテンツを多数の言語で用意する必要があります。規制当局と業界で進められている取り組みが急速に展開していることを考えると、状況に対応するには、大量の翻訳をこなすだけでなく、翻訳作業をきわめて迅速に進めることが要求されます。COVID-19 感染者の治療に関しては、多数の国々による、世界各地を視野に入れた取り組みが始まりそうです。現在進行中の臨床プログラムに関しては、プロトコル変更、逸脱、合意手続き変更、患者情報を適切に取り扱うために、いっそう大量のコンテンツを翻訳することが必要になります。また、各種のテクノロジー プラットフォームによって、試験のバーチャルな実施方法や、紙の書類に取って代わる電子的データ キャプチャの実現が進む可能性があります。
ライオンブリッジは、世界のあらゆる大陸と言語を横断的にカバーしながら迅速な臨床試験を実施するという大規模なニーズにも対応できる力を備えています。臨床プログラム案件全体の翻訳作業を集中管理してライオンブリッジにお任せいただければ、試験の実施体制を最適化し、遅延を小さくすることができます。ライオンブリッジのマルチメディア ソリューション スイートと翻訳・通訳サービスを組み合わせれば、バーチャルな試験実施体制を実現し、臨床試験の進行が阻害される事態の発生を減らすことができます。たとえ医療の先行きがどれほど不透明な状況になっても、「壁を打ち破り、架け橋を築く」という弊社の信念が揺らぐことはありません。
危機的な状況における情報伝達の方法について、ライオンブリッジはこう考えています。クライシス コミュニケーション リソース センターをご覧ください。