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ライオンブリッジの連載記事「ディスラプション シリーズ」の第 4 回。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) がもたらした危機的状況の中で医療業界に起きている変化を、当社ライフ サイエンス部門のエキスパートが解説します。
COVID-19 のパンデミックにより、ご存知のように臨床試験の実施は歴史的にもまれに見る大きな壁に阻まれています。臨床試験やヘルスケア全体のエコシステムは今、かつてないほどの困難に直面しています。パンデミックが起こる前に始まった臨床試験の多くが変更、遅延、あるいは中止となり、研究コミュニティと規制当局は COVID-19 の治療を見据えた臨床試験の立ち上げを急いでいます。
崩壊は至るところで起きつつあります。新型コロナウイルスに対する治験の計画と実施、新たなワクチンの開発を急ピッチで進める必要があり、関連する治験への迅速な対応も求められます。また、COVID-19 患者に対する救急対応により、医療体制はひっ迫しています。命に関わる病気、希少疾患、慢性疾患など、新型コロナウイルス以外の多くの臨床試験も忘れてはなりません。
プロトコルを作成し、実施するにあたり、COVID-19 の影響を抑える手段として注目されているのがデジタル テクノロジーです。臨床試験スポンサーの多くは、バーチャルやリモートでの実施に多くのメリットがあると気付き始めています。最近、FDA と EMA の両機関により規制が緩和され、臨床試験スポンサーは被験者の安全性確保を条件にデジタル テクノロジーを利用できるようになりました。
かつてない危機的状況のなか、私たちは理論を精査するスケジュールを早め、臨床試験開始の障壁を引き下げる必要に迫られています。昨今の状況に速やかに適応し、可能な限り通常の状態を維持しなければなりません。
通常の臨床環境だけでなく、臨床試験でもテレヘルス テクノロジー、オンライン トレーニング プラットフォーム、リモートによるデータ収集が普及しつつあります。医療機関に通院することなく、ビデオや電話、またはモバイル ナース ソリューションによるリモート診察が行われるようになってきています。被験者の自宅には臨床検査キットが届き、ビデオによる説明やリモート診察が行われます。検査後、被験者はデジタル ツールやモバイル ツールを使用してデータをアップロードし、病院側ではそれを QR コードで受け取ります。接触がないため感染のリスクはなく、簡単に情報を得られます。アメリカ国立衛生研究所 (NIH) は 3 月 23 日、新型コロナウイルス関連の現場医療従事者向けにバーチャル安全トレーニングを提供する Web サイトを立ち上げることを発表しました。
製薬業界は、データの整合性や被験者の安全に関する懸念から、テクノロジーの採用に消極的、懐疑的でさえあるとよく言われています。しかし、現在の危機的状況において、テクノロジーは文字どおり生死を分ける手段になりえます。病院はひっ迫し、被験者は通院にためらいや恐怖を感じています。何より医療従事者向けの個人用防護具が足りていません。テクノロジーを活用することで、こうした障壁を緩和しつつ、社会的距離も確保できます。今回のパンデミックが、デジタル ソリューションが臨床試験に役立つことを証明したといえるでしょう。
パンデミックにより、速やかにリスクを緩和して不測の事態に備える上でテクノロジー ソリューションを採用するメリットが明らかになったことで、パンデミック後の世界でもバーチャル治験やハイブリッド型の治験は引き継がれていくでしょう。現在の臨床試験の実施モデルは、臨床サイトの使用や被験者/モニターの定期的な通院を想定していますが、これらの多くは、タブレット、ウェアラブル端末、スマートフォン、テレヘルス ソリューションなどのモバイル テクノロジーで置き換えるか、補助することができます。さらに、リアルタイム翻訳や電話通訳を活用すれば、サイトやスポンサーのスタッフのトレーニングを eラーニングや AR (拡張現実) などリモートで実施できます。臨床試験責任医師のグローバル ミーティングもオンラインで済ませれば、遅延なく治験を開始でき、旅費も発生しません。さらなるメリットとして、デジタル コンテンツは変更、アクセス、ローカライズが容易なため、閲覧者に合わせて言語や情報を調整できます。
臨床試験をバーチャル環境に移行できるかどうかは治験の設計によります。臨床試験には「汎用的なプロセス」はありません。完全な「サイトレス治験」が実現するのはまだまだ先になるでしょう。FDA と EMA がすでに支援を表明しているものの、さらに規制を整備する必要があります。
今後数年で、オンサイトとリモートを組み合わせたハイブリッド型の治験設計が増えていくと考えられます。テクノロジーにより被験者の負担を軽くできれば、遠方に住む被験者にも治験に参加してもらえるようになり、募集の迅速化や参加意欲の向上にもつながります。モバイル ヘルス デバイス (ePRO、eDiaries、eConsent など) なら被験者からデータを直接収集できます。こうした取り組みはすべて被験者のエクスペリエンスの向上につながります。
とはいえ、テクノロジー ベースの治験を臨床分野ですぐに実現するのは難しいでしょう。だからこそ、現在の崩壊的状況を乗り越えるにはライフ サイエンスに精通したチームと連携することが重要です。ライオンブリッジには、デバイスや薬剤が利用可能になった際のサイト スタッフのトレーニングから結果の翻訳まで、臨床試験プロセスのあらゆる段階に対応できるだけの知識とリソースがあります。お客様のニーズに適した当社のサービスについて、世界を拠点とする当社までぜひお問い合わせください。